ウィーンまで届けるのかと思ったら

昨年八月の暑い日のことでした。

可愛らしい日本人の奥さまとオーストリア人のご夫婦が来店されました。
しばらくお話しをすると、ご主人がおもむろに「実はボクはキモノをオーダーしたいんだ」とひと言。
我が店もついにインターナショナルになったのか! と、手放しで喜ぶワタクシ。

決して裕福ではないオーストリアの田舎のご出身で、苦学を重ねて念願の弁護士になり
今やっと日本に来れるようになったとの事。
柔和な表情には様々な困難を乗り越えてこられて得た、厚みのある豊かな人格を感じました。

家で洗えるキモノが良い。だけど化学繊維のキモノは嫌。
そんな奥さまの希望もあって、木綿の久留米絣を九州から至急取り寄せて
滞在中に何とか間に合うように見ていただく運びになったのです。
揃えた生地をお買い求めになり、仕立には1か月かかるとお伝えすると
「わかった。仕上がったらキミが届けてくれ。」
ビックリしながらも「はい! ウィーン観光の案内をお願いします♪」と即答すると
「気にいった! ボクはキミをとっても好きになった!」と握手とハグをしてくれました。
近いうちにまた日本に来る、その時に仕上がった着物を取りに寄るとの言葉を残してお帰りになりました。

それから半年くらいの日が経った頃、SNSに連絡が入り
「ボク達が日本に滞在するためのアパートを鎌倉で借りたい、探すのを手伝って欲しい。」
詳しく聞くと、実は奥さまは治療のために頻繁に来日される事情があったのです。
そこから、奥さまがオンラインで物件探し。その物件をワタクシが現地チェックする。
そんな日々が続きました。

そして昨日。当店から近い場所に無事入居!
長いホテル暮らしから解放された奥さまの顔には、安堵の表情が浮かんでいました。
ご主人が来日されるのは夏。
それまではボクが奥さまを守るのです。 あのご主人からの信頼に応えたいですもん





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